■この記事で分かること
・限流ヒューズの基本特徴(小形・軽量・密閉構造でガス放出なし)と大電流遮断能力の仕組み
・保護する機器に応じた限流ヒューズの4つの種類(T・M・C・G)の違いと用途
・ストライカ引外し装置の動作原理と、三相開放による欠相防止の重要性
はじめに
第一種および第二種電気工事士の試験において、高圧受電設備(キュービクルなど)の機器に関する知識は必須です。その中でも、短絡(ショート)事故という非常に危険な状態から設備を保護する重要な役割を担っているのが「限流ヒューズ」です。
また、限流ヒューズは単体で使われるだけでなく、高圧交流負荷開閉器(LBSなど)と組み合わせて使用されることが多く、その際に重要な働きをするのが「ストライカ引外し装置」です。
この記事では、電気工事士試験で頻出となる限流ヒューズの特徴や種類、そしてストライカ引外し装置の動作原理と役割について、初心者にも分かりやすく徹底解説します。試験のひっかけ問題対策としても役立つ内容ですので、ぜひ最後まで読み込んでください。
高圧受電設備を守る「限流ヒューズ」の特徴
限流ヒューズは、回路に短絡などの異常な大電流が流れた際に、自らが溶断(焼き切れること)して回路を遮断し、他の機器へ被害が拡大するのを防ぐ保護機器です。電気工事士試験で問われる限流ヒューズの主な特徴は以下の4点です。

短絡電流を「限流遮断」する能力
短絡事故が発生すると、通常の何十倍、何百倍という凄まじい大電流(短絡電流)が流れます。限流ヒューズは、この短絡電流が最大値に達する前に、極めて短い時間(半サイクル以内)で電流を制限し、強制的に遮断する能力を持っています。これを「限流効果」と呼びます。この効果により、電路や機器に加わる機械的・熱的なダメージを最小限に抑えることができます。

小形・軽量で大きな定格遮断電流を持つ
高圧回路の短絡電流を遮断するためには、通常、高圧真空遮断器(VCB)のような大型で高価な機器が必要です。しかし、限流ヒューズは小形・軽量でありながら、20kAや40kAといった非常に大きな定格遮断電流を持っています。限流ヒューズ付きの高圧交流負荷開閉器を採用することで、受電設備のスペース削減とコストダウンが可能になります。

密閉構造でアークやガスの放出がない
ここが電気工事士試験で最も狙われやすいポイントです。
限流ヒューズは、溶断部(エレメント)が丈夫な絶縁筒の中に収められており、その周囲には消弧砂(ケイ砂など)が充填されています。ヒューズが溶断した際に発生する高温のアーク(火花)は、この消弧砂によって急速に冷却・吸収されます。
そのため、「完全な密閉構造」となっており、短絡電流を遮断する際に外部へアークや有害なガスを放出することがありません。
試験では、「通常は密閉されているが、短絡電流遮断時にはガスを放出する」といった誤りの選択肢がよく出題されるため、絶対に引っかからないようにしましょう。「限流ヒューズ=密閉=ガス放出なし」と暗記してください。

用途で分かれる限流ヒューズの4種類(T・M・C・G)
限流ヒューズは、保護する機器の特性に合わせて溶断特性が調整されています。電気工事士試験では深く問われないこともありますが、実務上非常に重要な知識です。用途によって主に「T」「M」「C」「G」の4種類に分類されます。
T特性(変圧器用)
Transformer(変圧器)の頭文字です。変圧器に電源を投入する際、一瞬だけ非常に大きな電流(励磁突入電流)が流れます。T特性のヒューズは、この短時間の突入電流では溶断せず、本当の短絡事故のときだけ確実に溶断するように設計されています。

M特性(電動機用)
Motor(電動機・モーター)の頭文字です。モーターは起動時に、定格電流の数倍の起動電流が数秒間流れます。M特性のヒューズは、この長めの起動電流に耐えつつ、短絡事故時には素早く遮断する特性を持っています。

C特性(コンデンサ用)
Capacitor(コンデンサ)の頭文字です。高圧進相コンデンサなどの保護に使用されます。コンデンサ投入時の突入電流に耐える特性を持っています。

G特性(一般用)
General(一般)の頭文字です。特定の突入電流を考慮しなくてよい一般的な回路や、保護対象が混在している場合などに使用される標準的な特性を持つヒューズです。

ストライカ引外し装置の動作原理と役割
限流ヒューズは高圧交流負荷開閉器(LBS)と組み合わせて使用されることが多いです。ここで重要になるのが「ストライカ引外し装置」の存在です。
[画像挿入箇所:ストライカ引外し装置と開閉器の連動を示す図解]
ストライカ引外し装置とは?
ストライカ(Striker)とは「打つもの」という意味です。限流ヒューズの端部には、ヒューズが溶断したことを物理的に知らせる「溶断表示棒(ストライカピン)」が内蔵されています。ヒューズが溶断すると、スプリングの力でこのピンがポコンと外部へ飛び出します。
この飛び出したピンが開閉器の引き外し機構(トリップ機構)を叩き、自動的にスイッチを開放(オフ)させる仕組み全体をストライカ引外し装置と呼びます。
ヒューズ溶断時の開閉器開放メカニズム
1. 短絡事故などにより、過大な電流が流れる。
2. 限流ヒューズの内部エレメントが溶断し、電流を遮断する。
3. エレメント溶断と同時にストライカピンが飛び出す。
4. 飛び出したピンが開閉器のロック機構を解除する。
5. 開閉器のバネの力により、スイッチが強制的に「開放」される。
最も重要な役割「欠相防止」とは
高圧受電設備は通常、三相交流(3本の電線)で電力を供給しています。もしストライカ引外し装置がなく、3本あるヒューズのうち1本だけが溶断した場合どうなるでしょうか。
残りの2本からは電気が供給され続ける状態になります。これを「欠相(けっそう)」と呼びます。
欠相状態で三相モーターなどを運転し続けると、モーターに異常な電流が流れ、過熱して焼損事故を引き起こす非常に危険な状態となります。
ストライカ引外し装置があれば、1本のヒューズが溶断しただけでも、連動して開閉器が動作し「三相すべてを同時に開放」してくれます。これにより、一相が欠けたまま通電する欠相事故を確実に防止できるのです。
試験では、「ストライカ引外し装置の役割は?」という問いに対し、「ヒューズ溶断時に連動して開閉器を開放する(欠相を防止する)」という解答を選べるようにしておきましょう。

電気工事士試験での出題ポイントまとめ
第一種電気工事士試験で特に狙われやすいポイントをまとめます。試験直前の復習に役立ててください。
・限流ヒューズの特徴
ガスやアークの放出は「ない(密閉されている)」。
短絡電流を「限流遮断」する。
小形・軽量で、遮断容量が「大きい」。
・ストライカ引外し装置の役割
ヒューズ溶断時に連動して開閉器を「開放」する。
三相を同時に開放することで「欠相を防止」する。
※ヒューズを取り付ける際のズレ防止や、過電流時の開閉器ロックといった機能はありません。
まとめ
高圧受電設備において、限流ヒューズとストライカ引外し装置は、短絡という致命的な事故から設備と安全を守るための要となる組み合わせです。
限流ヒューズが身を挺して大電流を食い止め(限流遮断・密閉構造)、その犠牲をストライカが検知してシステム全体を安全に停止させる(欠相防止・開閉器開放)という一連の連携プレーをイメージできれば、試験問題も容易に解けるはずです。

