この記事で分かること
・絶縁抵抗計のガード端子を使用する最大の目的と役割
・高圧ケーブル測定時の表面漏れ電流による誤差発生のメカニズム
・第一種電気工事士試験で問われるポイントと正しい接続方法
第一種電気工事士の資格取得を目指す上で、高圧受電設備に関する知識は避けて通れません。その中でも、高圧ケーブルの保守・点検業務において非常に重要なのが絶縁抵抗測定です。
本記事では、高圧ケーブルの絶縁抵抗測定時に使用される「ガード端子(G端子)」に焦点を当て、その使用目的や仕組み、実際の接続方法について徹底的に解説します。試験対策としてはもちろん、実務においても必須となる知識ですので、しっかりと理解を深めていきましょう。
高圧ケーブル絶縁抵抗測定時のガード端子使用とは?
高圧ケーブルの絶縁性能を評価するためには、高圧絶縁抵抗計(メガ)を使用します。一般的な低圧回路の測定では「L端子(ライン)」と「E端子(アース)」の2つを使用しますが、高圧ケーブルの測定においては、第3の端子である「ガード端子(G端子)」を使用することが基本となります。

絶縁抵抗測定の基本と高圧ケーブルの特殊性
絶縁抵抗測定は、導体と大地間、あるいは導体相互間に直流電圧を印加し、そこに流れる微小な電流(漏れ電流)から絶縁抵抗値を算出する試験です。高圧ケーブルは、低圧ケーブルと比較して印加する電圧が高く(通常1000Vや2000Vなど)、ケーブルの構造も複雑です。
高圧ケーブルの端末部分は、絶縁体が剥き出しになっており、空気中の湿気やほこりなどの影響を受けやすくなっています。そのため、測定時に想定外の電流が流れてしまい、正確な測定が困難になるという特殊性を持っています。

ガード端子(G端子)の役割と仕組み
ガード端子(保護端子とも呼ばれます)は、測定器の指示値に影響を与えないように、不要な電流をバイパスさせるための端子です。
高圧ケーブルの測定において、電流は主に二つの経路を流れます。一つはケーブルの絶縁体内部を通る電流(これを測定したい)、もう一つはケーブル端末の絶縁物表面を伝わって流れる電流です。ガード端子を適切に接続することで、後者の絶縁物表面を流れる電流を測定回路から除外し、純粋な絶縁体内部の抵抗値のみを測定できるようになります。

なぜガード端子が必要なのか?漏れ電流による測定誤差
ガード端子を使用する最大の理由は、絶縁物表面の漏れ電流による測定誤差を防ぐためです。ここでは、漏れ電流の種類と、それが測定値に与える悪影響について詳しく解説します。
体積漏れ電流と表面漏れ電流の違い
絶縁物に電圧を印加した際、絶縁物を介して流れる電流を総称して漏れ電流と呼びます。漏れ電流は大きく以下の二つに分類されます。
1. 体積漏れ電流
絶縁物の内部(体積中)を貫通して流れる電流です。この電流の大きさが、ケーブル本来の絶縁性能(劣化具合)を示しています。絶縁抵抗測定において、真に求めたいのはこの体積漏れ電流に基づいた抵抗値です。
2. 表面漏れ電流
ケーブル端末など、絶縁物が大気に触れている表面を伝わって流れる電流です。この電流は、表面の汚れ、付着したほこり、空気中の湿度によって大きく変動します。ケーブル内部の絶縁性能が良好であっても、表面が汚れていたり湿気が高かったりすると、表面漏れ電流は増加します。

表面漏れ電流が測定値に与える悪影響
通常のL端子とE端子のみを用いた測定(2端子測定)では、測定器は体積漏れ電流と表面漏れ電流の合計値を読み取ってしまいます。
もし、ケーブル端末の表面が汚れていて表面漏れ電流が多く流れた場合、測定器は全体の漏れ電流が大きいと判断し、実際の絶縁抵抗値よりも著しく低い値(絶縁不良)を示してしまいます。つまり、ケーブル本体は健全であるにもかかわらず、表面の汚れによる誤差で不合格と判定してしまうリスクがあるのです。
これを防ぐためにガード端子を使用し、表面漏れ電流による誤差を排除して、正確な絶縁劣化診断を行う必要があります。
ガード端子の正しい接続方法と手順
ガード端子の効果を発揮させるためには、正しい接続方法を理解しておく必要があります。試験でも接続先を問われることがありますので、しっかりと押さえておきましょう。

測定器のL端子、E端子、G端子の接続先
高圧ケーブル(CVケーブルなど)を測定する場合の各端子の接続先は以下の通りです。
L端子(ライン端子)
高圧ケーブルの芯線(導体)に接続します。
E端子(アース端子)
高圧ケーブルの遮蔽層(シールド・銅テープ)または接地線に接続します。
G端子(ガード端子)
ケーブル端末の絶縁物表面に裸銅線などを数回巻き付け、そこに接続します。L端子とE端子の中間付近の絶縁体表面に設置するのが一般的です。

表面漏れ電流をバイパスする仕組み
上記の接続を行うと、導体(L端子)から流れ出た電流のうち、絶縁体表面を伝わってアース(E端子)に向かおうとする表面漏れ電流は、途中で巻き付けられた裸銅線に集められ、G端子へと流れ込みます。
絶縁抵抗計の内部回路では、G端子に流れ込んだ電流は電流計(メーター)を通らずに電源へ戻る構造になっています。これにより、メーターには絶縁体内部を通る体積漏れ電流のみが流れ、表面の汚れや湿気に影響されない、正確な絶縁抵抗値を測定することができます。

第一種電気工事士試験の過去問傾向と対策
第一種電気工事士の筆記試験において、高圧ケーブルの絶縁抵抗測定に関する問題は頻出項目の一つです。
よく出る問題パターン
試験で最もよく問われるのは、ガード端子を使用する目的そのものです。
「高圧ケーブルの絶縁抵抗の測定を行うとき、絶縁抵抗計の保護端子(ガード端子)を使用する目的として、正しいものはどれか」といった形式で出題されます。
正解の選択肢は必ず「絶縁物の表面の漏れ電流による誤差を防ぐため」といった内容になります。体積漏れ電流ではなく、表面の漏れ電流への対策であることを明確に区別して覚えてください。

引っ掛け問題に注意
選択肢の中には、もっともらしい誤りの記述が混ざっていることがあります。
例えば、「高圧ケーブルの残留電荷を放電するため」という選択肢がよく見られます。高圧ケーブルには静電容量があり、測定後には電荷が残留するため放電作業が必要ですが、これはアース棒などを用いて行うものであり、ガード端子の目的ではありません。
また、「指針の振れ切れによる焼損を防止するため」といった選択肢も誤りです。各端子や機器の本来の目的を正確に把握しておくことが、引っ掛け問題に惑わされないための対策となります。
まとめ
高圧ケーブル絶縁抵抗測定時のガード端子使用について解説しました。
重要なポイントは以下の通りです。
・ガード端子(保護端子)の目的は、絶縁物表面の漏れ電流による誤差を防ぐこと。
・これにより、表面の汚れや湿気の影響を排除し、ケーブル本来の正確な絶縁抵抗値を測定できる。
・L端子は導体、E端子は遮蔽層、G端子は絶縁物表面に巻き付けた導線に接続する。
・試験では「残留電荷の放電」などの誤りの選択肢に注意する。
第一種電気工事士試験では、このような実務に直結する測定機器の取り扱いや目的がよく問われます。高圧ケーブルの絶縁抵抗測定におけるガード端子の役割は、原理からしっかりと理解しておくことで、確実に得点源にすることができるでしょう。


