この記事でわかること
・落差に応じた水車の種類(ペルトン・フランシス・プロペラ)の使い分け
・取水口から放水口までの発電用水の正しい経路順序
・試験で頻出する発電機出力と揚水発電ポンプ入力の計算公式
電気工事士試験(特に第一種)の筆記試験では、発電・送電・変電施設に関する問題が出題されます。その中でも「水力発電」は、水車の名称や仕組み、そして計算問題が頻出する非常に重要な得点源です。
公式の丸暗記だけでなく、仕組みを根本から理解することで確実な得点につながります。今回は水力発電の必須知識である、水車の種類、水の経路、発電機出力、そして揚水発電のポンプ入力について徹底解説します。
1. 水力発電所の水車の種類と適用落差
水力発電では、水の落ちる勢い(落差)を利用して水車を回し、発電機を動かします。設置される場所の落差の大小によって、適した水車の種類が異なります。試験では「適用落差の最大値が高いものから順に並べる」といった問題がよく出題されます。

高落差用:ペルトン水車
適用落差が200m以上の高い場所で使用されます。水をノズルから勢いよく噴射し、お椀型の羽根(バケット)に当ててその衝撃で回転させる「衝動水車」の一種です。落差が最も大きい水車といえばペルトン水車と覚えましょう。
中高落差用:フランシス水車
適用落差が50mから500m程度で、日本の水力発電所で最も広く普及している水車です。水を渦巻き状のケーシング(外殻)から案内羽根を通してランナ(羽根車)に流入させ、その水圧と反動で回転させる「反動水車」です。
低落差用:プロペラ水車
適用落差が5mから80m程度の低い場所で使用されます。扇風機や船のスクリューのような形をした羽根を持ち、低い落差で大量の水を流すのに適しています。
順番の覚え方
適用落差の最大値が高い順は以下の通りです。
1位:ペルトン水車(高落差)
2位:フランシス水車(中高落差)
3位:プロペラ水車(低落差)
試験ではこの順番を問われることが多いので、確実に暗記しておいてください。
2. 発電用水の経路を理解する
水力発電所で水がどのように流れていくか、その経路の順序を問われる問題も定番です。現場の図をイメージしながら覚えましょう。

正しい経路の順序
水の流れは以下の順序になります。
1. 取水口(ダムなどの水を最初に取り入れる入り口)
2. 水圧管路(高い水圧に耐えながら水を水車まで導く太い管)
3. 水車(水の力で回転し、発電機を回すメインの設備)
4. 放水口(仕事をした水を川などへ戻す出口)
過去問ではこの順序を入れ替えた選択肢が出題されます。水を取り入れ、管を通って水車を回し、最後に川へ放水するという自然な流れを理解していれば迷うことはありません。

3. 水力発電所の発電機出力計算
計算問題として非常によく出るのが、発電機出力の計算です。一見難しそうな公式ですが、構成要素を理解すれば単なる掛け算です。
発電機出力の公式
発電機出力P(単位:キロワット、kW)は以下の式で求められます。
P = 9.8 × Q × H × 総合効率
各記号の意味
・Q:流量(1秒間に流れる水の量。単位:立方メートル毎秒、m3/s)
・H:有効落差(実際に発電に使える水の落差。単位:メートル、m)
・総合効率:水車の効率と発電機の効率を掛け合わせたもの。(例:効率85%なら0.85)
公式のポイント
公式からわかるように、水車の出力Pは「有効落差H」と「流量Q」の積(掛け算)に比例します。試験では「水車の出力は何に比例するか」という文章問題も出題されるため、「出力PはQHに比例する」と覚えておきましょう。

計算のコツ
試験で出題された場合は、与えられた数値をすべて掛け合わせるだけです。「9.8」という重力加速度に関わる定数を忘れないようにしましょう。計算ミスに気をつけて、落ち着いて解答を導き出してください。最後に単位が[kW]か[MW]かを確認することも重要です。

4. 揚水発電所のポンプ入力計算
揚水発電所とは、電力需要の少ない夜間に余った電気を使って下のダムから上のダムへ水をくみ上げ(揚水)、昼間の電力需要が多い時間帯にその水を落として発電する施設です。ここでは「水をくみ上げるために必要な電力(揚水ポンプの電動機入力)」の計算が問われます。

ポンプの電動機入力の公式
電動機の入力Pm(単位:キロワット、kW)は以下の式で求められます。
Pm = (9.8 × Q × H) / 総合効率
各記号の意味
・Q:揚水流量(m3/s)
・H:全揚程(水をくみ上げる高さ、m)
・総合効率:ポンプの効率と電動機の効率を掛け合わせたもの。
発電機出力との決定的な違い
発電機出力の公式とそっくりですが、決定的な違いが一つあります。それは「効率」の扱いです。
・発電機出力(電気を生み出す):効率を「掛ける(分子にくる)」
・ポンプ入力(電気を消費する):効率で「割る(分母にくる)」
これは、電気を生み出すときは機械のロス(損失)があるため、実際の出力は計算上の理想値より小さくなります。そのため1以下の効率を掛けます。
反対に、水をくみ上げるためのモーターは、機械のロスがある分だけ、余計に電気を消費して頑張らなければなりません。そのため1以下の効率で割って、必要な入力電力を大きく見積もる必要があるのです。この理屈を理解しておくと、公式のど忘れを防ぐことができます。

まとめ
第一種電気工事士試験における水力発電のポイントは以下の4つに絞られます。
・水車の適用落差が高い順は、ペルトン → フランシス → プロペラ
・水の正しい経路は、取水口 → 水圧管路 → 水車 → 放水口
・発電機出力Pは、「9.8 × Q × H × 効率」の掛け算で求められ、QHに比例する
・揚水ポンプ入力Pmは、「9.8 × Q × H / 効率」の割り算で求める
これらの知識と公式の仕組みをしっかりマスターし、過去問を繰り返し解くことで、本番での確実な得点につなげてください。


