電気工事士の筆記試験において、多くの受験者が苦手意識を持つのが「計算問題」です。特に配電理論の分野では、回路図と数値が並ぶため、難しそうに見えて後回しにしてしまう人も少なくありません。
しかし、今回解説する「単相2線式の電圧降下」は、電気の流れ方のルールさえ掴めば、実は簡単な足し算と掛け算だけで解ける得点源です。また、この分野は計算だけでなく、電気工事士として必須の知識である「電圧の種別(低圧・高圧の区分)」とも深く関わっています。
この記事では、過去問の出題形式をベースに、計算の手順と、合わせて覚えておきたい配電の基礎知識について徹底解説します。
記事を読む前に!実践・過去問チャレンジ
まずは、実際の試験で出題される形式の問題に挑戦して、現在の理解度を確認してみましょう。
この問題は、配電線路の末端電圧から、大元の電源電圧を逆算して求める問題です。
【問題】
図のような単相2線式回路で、c-c’間の電圧が100Vのとき、a-a’間の電圧(V)は。
ただし、rは電線の抵抗(Ω)とする。

- 100
- 102
- 103
- 104
解答のヒント
答えは導き出せましたか?
この問題を解くための重要なカギは以下の2点です。
- 電流は川の流れのように合流する
- 電線は「行き」と「帰り」の2本ある
次の章で、正解とその理由をステップごとに詳しく解説します。

1. 徹底解説:電圧降下問題の解き方(3ステップ)
正解は、選択肢の 4(104V) です。
なぜ104Vになるのか、計算の流れを順を追って見ていきましょう。
ステップ1:電線に流れる電流を整理する
計算ミスをする最大の原因は、電線に流れる電流の値を間違えることです。
回路図には負荷の電流(10Aや5A)が書いてありますが、電線そのものに流れる電流は場所によって異なります。
- 【末端の電線(b-c間)】ここには、一番奥の負荷(c-c’)へ向かう電流だけが流れます。→ 流れる電流は 5A です。
- 【電源側の電線(a-b間)】ここが最重要ポイントです。この電線には、手前の負荷(10A)と、さらに奥の負荷(5A)の両方の電流が合流して流れます。→ 流れる電流は 10A + 5A = 15A です。

ステップ2:区間ごとの「片道の電圧降下」を計算する
電流がわかったので、オームの法則(電圧 V = 電流 I × 抵抗 R)を使って、電線1本(片道)でどれくらい電圧が下がるかを計算します。各区間の抵抗 r は 0.1Ω です。
- 【b-c間(片道)】5A × 0.1Ω = 0.5V
- 【a-b間(片道)】15A × 0.1Ω = 1.5V
合計すると、片道で 0.5V + 1.5V = 2.0V の電圧が下がります。
ステップ3:最後に必ず「往復2倍」にする
単相2線式は、「行き(非接地側)」と「帰り(接地側)」の2本の電線で電気を送っています。電圧降下は、行きの線でも帰りの線でも同じように発生します。
- 回路全体の電圧降下 = 片道の合計 2.0V × 2 = 4.0V
末端で100Vを確保するためには、この途中で失われた4Vを、大元の電源電圧に上乗せしておく必要があります。
- 電源電圧(a-a’) = 100V + 4V = 104V
よって、正解は 4 となります。
2. テーマ解説:電圧の種別と単相2線式
計算問題ができるようになったら、関連する基礎知識もしっかり押さえておきましょう。試験では「電圧の区分」などの定義問題も頻出です。
電圧の種別(重要!)
私たちが普段扱っている100Vや200Vの電気は「低圧」に含まれます。
では、どこまでが低圧なのでしょうか? 第二種電気工事士試験では、この境界線が非常によく出題されます。
| 区分 | 定義(交流) | 定義(直流) |
| 低圧 | 600V 以下 | 750V 以下 |
| 高圧 | 600V超 7000V以下 | 750V超 7000V以下 |
| 特別高圧 | 7000V 超 | 7000V 超 |
【覚え方のポイント】
- 交流(AC)は 600V がライン。
- 直流(DC)は 750V がライン。
「単相2線式100V」の問題が出たら、「これは交流の低圧回路だな」と瞬時に連想できるようにしておきましょう。
単相2線式(1φ2W)の特徴
今回の問題のモデルとなっている単相2線式は、一般家庭のコンセントや電灯に使われている最も基本的な電気方式です。
- 【線間電圧】 100V
- 【対地電圧】 100V
- 【構成】 非接地側電線(黒線)と接地側電線(白線)の2本
この方式は配線がシンプルですが、200Vの家電(大型エアコンなど)が使えないという特徴があります。(※200Vも使える方式は「単相3線式」といいます)
まとめ
今回の配電理論のポイントをおさらいしましょう。
- 計算は末端から整理する:電源に近い電線には、全ての負荷電流が合流します。
- 往復を忘れない:単相2線式の計算では、最後に必ず「×2」をして往復分の電圧降下を求めます。
- 電圧の定義を覚える:交流であれば600V以下が低圧です。
配電理論の計算問題は、一度解き方のパターンを理解してしまえば、数字が変わっても対応できる確実な得点源です。苦手意識を持たず、まずはこの単相2線式の計算から攻略していきましょう。

