この記事でわかること
・第一種および第二種電気工事士試験における油さしの正しい用途と出題ポイント
・金属管のねじ切り作業で切削油の注油が絶対に必要となる理由とメカニズム
・リード型ねじ切り器やパイプバイスなど一緒に覚えるべき必須の関連工具
今回は、第一種および第二種電気工事士の取得を目指している方に向けて、工事用材料のその他材料に分類される「油さし」について漏れなく徹底解説します。
電気工事士の試験勉強をしていると、ケーブルやコンセントといったメインの材料以外にも、さまざまな周辺材料が登場します。その中でも油さしは、日常生活で見かけるものと形が似ているため、電気工事の現場で具体的にどのような目的で使われるのか疑問に思う方も多いでしょう。
一見すると地味なアイテムに思えるかもしれませんが、金属管工事を正確かつ安全に行うためには、工事の品質を左右する非常に重要な役割を持っています。筆記試験の写真鑑別問題でも出題されることがあるため、なぜ必要なのか、どのような場面で活躍するのかをしっかりと理解して、試験本番での得点源にしていきましょう。
油さしとは?

油さしは、機械の可動部や刃物などに対して油を注ぐための容器のことです。先端に細長いノズルがついており、容器の側面や底面を押すことで、適量の油をピンポイントで滴下できる構造になっています。

電気工事士の試験において、油さしは工事用材料の中の「その他材料」というカテゴリに分類されます。自転車のチェーンに油を差す際などに見かけるミシン油や潤滑油を入れることもありますが、電気工事の現場においては、主に「切削油(せっさくゆ)」または「ねじ切り油」と呼ばれる特殊な油を入れて使用します。
試験では油さしの写真が提示され、名称と用途を答える問題が出題されます。用途としては「ねじ切りや切断時に油を差す」「金属管のねじ切り作業において、切削油を注油するために使用する」が正解となります。間違えやすい選択肢として、絶縁油を注ぐ、防錆剤を塗るなどがありますが、切削油であることを正確に覚えておきましょう。
なぜ金属管のねじ切り作業に油さしが必要なのか?

電気工事で油さしが最も活躍するのは、厚鋼電線管や薄鋼電線管などの金属管工事です。
金属管同士をカップリングで接続したり、アウトレットボックスにロックナットで固定したりするためには、管の端に「ねじ山」を作る必要があります。このねじ山を作る作業を「ねじ切り」と呼びます。
ねじ切り作業では、専用の工具を使い、金属の刃で硬い金属管を直接削り取っていきます。この時、油さしを使って切削油を注がずに作業をしてしまうと、以下のような重大な問題が発生します。
摩擦熱による工具の破損を防ぐ(冷却効果)
金属同士を強い力で擦り合わせて削るため、作業中は手で触れられないほどの非常に高温の摩擦熱が発生します。油を差さずに削り続けると、ねじ切り器の刃が熱で変形したり焼き付いたりして、高価な工具が使い物にならなくなってしまいます。油さしで切削油を注ぐことで、この摩擦熱を奪って刃を冷却する効果があります。
ねじ山のむしれを防ぐ(潤滑効果)
潤滑成分がない状態で無理やり金属を削ると、摩擦抵抗が大きくなりすぎて表面が滑らかに削れません。結果として、引きちぎられたようなボロボロのねじ山になってしまいます。これを「むしれ」と呼びます。むしれが発生すると、ロックナットやブッシングが正しく噛み合わず、隙間ができて施工不良や漏水、漏電の原因となります。油さしを使って常に潤滑させることで、精度の高い美しいねじ山を作ることができます。
切りくずの排出をスムーズにする
ねじを切る際に出る細かな金属の切りくずが刃に絡みつくと、刃こぼれの原因になります。油さしで油を注ぐことで、この切りくずをスムーズに洗い流し、刃と管の間に異物が挟まるのを防ぐ役割もあります。
試験で頻出する油さしの関連工具

電気工事士の筆記試験では、ある工具とセットで使われる材料や工具を選ぶ問題がよく出題されます。油さしは単体で問われるよりも、以下の工具とセットで「ねじ切り作業の必須アイテム」として関連づけて覚えるのが合格への近道です。
リード型ねじ切り器(またはオスタ型ねじ切り器)
金属管の外側にねじ山を作るためのメイン工具です。この工具を管にセットしてハンドルを回し始めたら、すかさずもう片方の手で油さしを持ち、切削油をたっぷりと注ぎ続けます。試験の図記号や写真鑑別問題で最も油さしと関連性が高い工具です。
パイプバイス
ねじ切り作業を行う際、強い回転力をかけても金属管が動かないようにしっかりと挟み込んで固定するための台座(万力)です。
パイプカッタとクリックボール
金属管を必要な長さに切断するパイプカッタや、切断後の内側のバリ取りを行うクリックボールと面取器(リーマ)も、ねじ切り作業の前後に使われるため、一連の流れとしてセットで出題されやすい工具です。パイプカッタで切断する際にも、刃の滑りを良くして摩擦を減らすために油さしを使用することがあります。
試験対策での注意点と引っかけ問題

電気工事士試験では、この工事において使用しない工具や材料はどれか、という形式の問題が出題されます。ここで油さしが引っかけの選択肢として登場することがあるため注意が必要です。
油さしが必要になるのは、あくまで「ねじ切り」や「切断」を行う鋼製電線管などの金属管工事です。したがって、以下のような配管工事では油さしは使用しません。
ねじなし電線管工事(E管)
ねじなし電線管は、その名の通りねじを切らずに専用の止めねじ付きカップリングで接続する金属管です。ねじを切らないため、ねじ切り器も油さしも不要です。
合成樹脂管工事(PF管やVE管など)
硬質ポリ塩化ビニル電線管などのプラスチック製の管は、専用の接着剤や差し込み式の継手で接続します。金属ではないため切削油を使ったねじ切り作業は発生せず、油さしも必要ありません。
問題文に「ねじなし電線管」や「合成樹脂管」と書かれている場合は、選択肢に油さしやねじ切り器があっても、それらは使用しないものとして即座に除外できるようにしておきましょう。
まとめ

・問題文や選択肢で油さしを見たら、金属管工事のねじ切り・切断作業を直結して思い浮かべる。
・油さしは、切削油を注いで摩擦熱を抑え、ねじ切り器の刃を守るために必須の工事用材料(その他材料)。
・綺麗なねじ山を作り、確実で安全な施工を行うための重要な役割を持っている。
・試験対策としては、パイプバイスやリード型ねじ切り器とセットで理解しておく。
・ねじなし電線管や合成樹脂管の工事では使用しないため、引っかけ問題に注意する。
一見すると目立たないアイテムですが、金属管工事を正確かつ安全に行うためには必要不可欠な材料です。油さしの役割を論理的に理解することで、電気工事士試験での得点力をさらに高めていきましょう。
