【電気工事士】GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)徹底解説!短絡で遮断しない理由と波及事故防止

【電気工事士】GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)徹底解説!短絡で遮断しない理由と波及事故防止

記事を読む前に 実践・過去問チャレンジ

第一種電気工事士の筆記試験において、高圧受電設備の単線結線図や写真鑑別は合否を分ける重要な単元です。

その中でも、電柱の最上部に設置される「GR付PAS」は、出題頻度が非常に高い機器の一つです。

「地絡」と「短絡」。この2つの事故に対して、PASがどのように動くのかを正確に区別できていますか?

ここを曖昧にしていると、試験本番で思わぬ失点をしてしまいます。

まずは、実際によく出題される形式の問題で、現在の知識レベルをチェックしてみましょう。

問題

写真に示すGR付PASを設置する場合の記述として、誤っているものは次のうちどれか。

GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)
  1. 自家用側の引込みケーブルに短絡事故が発生したとき、自動遮断する。
  2. 電気事業用の配電線への波及事故の防止に効果がある。
  3. 自家用側の高圧電路に地絡事故が発生したとき、自動遮断する。
  4. 電気事業者との保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に設置する。

答えは決まりましたか?

「全部正しいように見える」

「短絡事故は大きな事故だから、当然すぐに遮断するべきでは?」

もしそう思ったなら、この記事を読む価値が十分にあります。

なぜなら、その直感こそが、この問題の最大の引っかけポイントだからです。

それでは、正解と詳しい解説を見ていきましょう。

1. ズバリ、正解(誤っている記述)は?

正解(誤っている記述)は、選択肢の 1 です。

「短絡事故が発生したとき、自動遮断する」という記述が誤りです。

ここがGR付PASの機能において、最も重要なポイントです。

結論から言うと、GR付PASは 短絡電流を遮断する能力を持っていません。

【電気工事士】GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)徹底解説!短絡で遮断しない理由と波及事故防止の問題の正誤と選択肢の図解説の黒板解説

なぜ短絡事故で遮断してはいけないのか?

GR付PASは「開閉器(スイッチ)」であり、「遮断器(ブレーカー)」とは異なる機器です。

通常の電流や、比較的小さな地絡電流(漏電)であれば安全に切ることができます。

しかし、短絡事故の際に流れる電流は数千アンペアと桁違いに巨大です。

もし、この巨大な短絡電流が流れている最中にPASを無理やり開こうとすると、接点の間で激しいアーク放電(火花)が発生し、消すことができずにPAS本体が焼損・爆発してしまう恐れがあります。

そのため、PASは短絡事故が起きても 絶対に自動遮断しない(何もしないで耐える) という動きをします。

2. 他の選択肢はなぜ正しいのか?

PASの本来の役割を理解するために、正しい選択肢についても確認しておきましょう。

2. 電気事業用の配電線への波及事故の防止に効果がある(正しい)

これがPASを設置する最大の目的です。

もし、あなたの管理する建物で地絡事故(漏電)が起きたとき、それを放置すると、電線を伝って電力会社の変電所までトラブルが及び、近隣の住宅や工場まで停電させてしまいます。これを「波及事故」と言います。

PASは、事故を検知して素早く自分の建物だけを切り離すことで、近隣への迷惑(波及事故)を防ぎます。

3. 自家用側の高圧電路に地絡事故が発生したとき、自動遮断する(正しい)

短絡電流は切れませんが、地絡電流は数アンペア程度と小さいため、PASでも安全に遮断することができます。

「GR付」という名前の通り、地絡(Ground Fault)を検知して、自動的に遮断するのがこの機器のメインの仕事です。

4. 電気事業者との保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に設置する(正しい)

PASは、電力会社から電気をもらう一番最初の入り口(構内第1柱など)に設置されます。

ここを境に「ここから先は需要家の責任です」という境界線、すなわち「責任分界点」としての役割を果たします。

3. 試験対策 PASとSOG制御装置の仕組み

試験では、PASの動作についてより深く問われることもあります。

PASは単独で動いているのではなく、電柱の下の方にある「SOG制御装置」という箱からの指令で動いています。

このSOG制御装置の役割をセットで覚えましょう。

G動作(Ground:地絡)

地絡事故を検知したときの動作です。

動作内容:直ちにPASを遮断(トリップ)させる。

目的:地絡事故の除去、波及事故の防止。

SO動作(Short / Over current:短絡・過電流)

短絡事故を検知したときの動作です。

動作内容:PASが動かないようにロックする。

仕組み:

  1. 短絡電流を検知したら、PASが開かないようにロックをかけます(SOロック)。
  2. その間に、電力会社側の変電所の遮断器が作動して、地域一帯が停電(無電圧)になります。
  3. 電気が止まった(無電圧)ことを確認してから、PASを安全に開放します。

つまり、短絡時は「自分では切らず、親分(電力会社)に切ってもらってから、こっそり開く」という動きをするのです。

これを理解していれば、選択肢1が間違いである理由がより深く納得できるはずです。

まとめ この問題の攻略ポイント

【電気工事士】GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)徹底解説!短絡で遮断しない理由と波及事故防止のまとめ解説画像

GR付PASについて、試験で問われる重要ポイントは以下の3点です。

  1. 地絡事故 は、自動で遮断する。(波及事故防止のため)
  2. 短絡事故 は、能力不足のため遮断しない。(焼損防止のため)
  3. 設置場所は、責任分界点(第1号柱)。

「PASは短絡に弱い」

このイメージを持っておけば、迷うことなく正解を選べるようになります。

電気工事士として、事故時の安全な動作シーケンスをしっかりと頭に入れておきましょう。