記事を読む前に!実践・過去問チャレンジ
高圧受電設備の保守・点検において、避けては通れないキーワードが「水トリー」です。
目に見えないケーブルの内部で静かに進行し、最悪の場合は近隣一帯を停電させる「波及事故」の原因にもなり得る危険な現象です。
第一種電気工事士の筆記試験でも頻出のこのテーマ。
まずは、実際の試験形式に近い問題で、現在の実力をチェックしてみましょう。
【問題】
6kV CVTケーブルにおいて、水トリーと呼ばれる樹枝状の劣化が生じる箇所は次のうちどれか。
- ビニルシース内部
- 遮へい銅テープ表面
- 架橋ポリエチレン絶縁体内部
- 銅導体内部
答えは決まりましたか?
「ケーブルが水に濡れるなら、一番外側じゃないの?」
「電気の通り道が錆びて劣化するのかな?」
そう迷った方もいるかもしれません。
正解がどれか、そしてなぜその場所で劣化が起きるのか。仕組みを理解すれば、丸暗記しなくても二度と間違えなくなります。
1. ズバリ、正解は?

正解は、選択肢の 3(架橋ポリエチレン絶縁体内部) です。
試験対策として、まずは以下の鉄則を覚えましょう。
・現象名:水トリー
・発生場所:架橋ポリエチレン絶縁体の内部
・形状:樹枝状(じゅしじょう)
なぜ、一番外側の「シース」や、中心の「導体」ではないのでしょうか?
それぞれの選択肢がなぜ違うのか、理由を見ていきましょう。
1. ビニルシース内部(不正解)
シースはケーブルの一番外側にある保護カバーです。ここが傷つくと水が入る原因にはなりますが、水トリーという現象そのものが進行する場所ではありません。
2. 遮へい銅テープ表面(不正解)
ここはアース(接地)される金属部分です。水分で腐食(サビ)することはあっても、絶縁体が破壊される水トリー現象とは異なります。
4. 銅導体内部(不正解)
中心にある電気の通り道です。金属ですので、樹脂の劣化現象である水トリーは発生しません。
2. そもそも「水トリー」とは何か?

水トリー(Water Tree)とは、その名の通り「水」によってケーブルの絶縁体内部に「樹木(Tree)」のような形の微細な亀裂ができる劣化現象のことです。
[ ここに画像:架橋ポリエチレン絶縁体内部に発生した樹枝状の水トリー拡大イメージ図を挿入 ]発生の3大要素
水トリーが発生するには、以下の3つの悪条件が揃う必要があります。
・水分:ケーブルが水に浸かっている、または湿気が多い環境。
・電界:常に高電圧がかかっていること(電気的なストレス)。
・異物・空隙:絶縁体の中に混入した微細なホコリや、小さな空気の隙間(ボイド)。
これらが揃うと、絶縁体の中に染み込んだ水分が電気の力で整列・凝集し、まるで植物の根や枝が伸びるようにジワジワと絶縁体を突き崩していきます。
3. 実務で役立つ!水トリーの種類と対策

試験に合格して現場に出たときのために、もう少し踏み込んだ知識も紹介します。
どこから伸びる?(3つのパターン)
水トリーは発生する起点によって、主に3種類に分けられます。
・内導水トリー
内側の「内部半導電層」から外側へ向かって伸びるもの。
・外導水トリー
外側の「外部半導電層」から内側へ向かって伸びるもの。
・ボウタイ状水トリー
絶縁体の真ん中にある異物を起点に、蝶ネクタイ(ボウタイ)のように両側に広がるもの。
いずれも放置すると、最終的には絶縁体を貫通してしまい、地絡事故(漏電)や短絡事故(ショート)を引き起こします。
現場での対策と診断
水トリーはケーブルの「内部」で起きるため、外観だけでは発見できません。
そのため、高圧受電設備では以下のような対策が重要になります。
・水に浸さない(施工管理)
ハンドホールやマンホール内に水が溜まり、ケーブル接続部などが常時水没している状態は非常に危険です。排水ポンプの設置や、防水処理の徹底が求められます。
・精密診断を行う(保守点検)
通常の絶縁抵抗測定(メガ測定)では初期の水トリーを発見しにくいことがあります。そのため、停電点検時に「直流漏れ電流法」などの特殊な診断を行い、予兆を早期に見つけます。
・E-Eタイプケーブルへの更新
最近のケーブルは、絶縁体と半導電層の密着性を高めた「E-Eタイプ」などが主流で、昔のケーブルに比べて水トリーが発生しにくくなっています。
まとめ:この問題の攻略ポイント
今回の問題のポイントをおさらいしましょう。
・キーワードは 「水トリー」=「架橋ポリエチレン絶縁体」。
・原因は 「水」 と 「電気(電界)」 と 「異物」。
・放置すると 「絶縁破壊(地絡事故)」 につながる。
この問題を解くときは、ケーブルの断面図を頭に思い浮かべ、その中心にある分厚い絶縁体の層が、水と電気の力で内側から蝕まれていくイメージを持ってください。
そうすれば、迷わず正解を選べるはずです。安全な電気設備を守るため、正しい知識を身につけておきましょう。

