現在、建設・設備業界における人手不足は深刻化しており、確かな技術を持つ電気工事士の需要はかつてないほど高まっています。
本記事では、第二種電気工事士からのステップアップを目指す方に向けて、第一種電気工事士の価値、2021年の法改正以降定着した「実務経験3年」のルール、そしてCBT化が進む最新の2026年度試験情報について詳しく解説します。
第一種電気工事士とは?第二種との決定的な違い

第一種電気工事士は、一般住宅などの低圧設備に加え、工場やビルなどの「高圧」の電気設備工事に従事できる国家資格です。第二種電気工事士の上位資格に位置づけられ、取得することで活躍のフィールドが劇的に広がります。
ビル・工場など大規模施設の工事が可能(最大500kW未満)
第二種電気工事士が扱えるのは「一般用電気工作物(600V以下)」に限られますが、第一種電気工事士を取得すると、最大電力500kW未満の「自家用電気工作物」の工事が可能になります。
具体的には、以下のような設備に関わることができるようになります。
- 大規模なビルや工場の電気室
- 高圧受電設備(キュービクル) の設置・メンテナンス
- 高圧ケーブル の敷設工事
特に、ビルや工場に電気を引き込むための心臓部であるキュービクル内の工事は、第一種の独壇場です。変圧器(トランス)や遮断器といった主要機器を扱うため、より専門的な知識と責任感が求められます。
年収・手当のアップが期待できる
対応できる工事の範囲が広がるため、企業内での評価も直結します。多くの電気工事会社やビル管理会社では、第一種電気工事士に対して資格手当を増額設定しています。
また、大規模現場の職長や現場代理人を任されるチャンスも増え、キャリアアップによるベース給与の向上も期待できるでしょう。
【重要】免状交付に必要な実務経験が「3年」に短縮

かつて第一種電気工事士の免状を取得するには「5年」の実務経験が必要でしたが、現在は法改正により期間が短縮され、より早期のキャリアアップが可能になっています。
法改正による実務経験要件の変更点(5年→3年)
2021年の法改正以降、免状交付に必要な実務経験年数は原則「3年」に統一されています。
以前は5年の経験が必要でしたが、現在は学歴に関わらず、合格後の実務経験(または合格前の経験も含む)が3年以上あれば免状を申請できます。
これにより、第二種を取得して現場に入り、3年仕事を覚えればすぐに第一種として独り立ちできるルートが確立されました。20代のうちに第一種を取得し、現場の最前線で活躍することも決して珍しくありません。
試験合格だけでは免状はもらえない点に注意
重要なポイントは、「第一種電気工事士試験に合格しただけでは、第一種の工事はできない」ということです。
- 試験に合格する(合格証書が届く)
- 実務経験を3年積む
- 都道府県知事に申請し、免状の交付を受ける
この手順を踏んで初めて、法的に第一種電気工事士として作業が可能になります。ただし、試験合格自体に有効期限はないため、実務経験が足りない状態でも先に試験に合格しておく「先取り受験」は非常に有効な戦略です。
第一種電気工事士試験の攻略法

第一種は第二種に比べて試験範囲が広く、より深い専門知識が問われます。また、2026年度からは試験方式にも変化があるため注意が必要です。
筆記試験の傾向(高圧受電設備の知識が必要)
筆記試験(学科試験)では、第二種の範囲に加え、高圧受電設備の結線図や構造、制御回路に関する問題が多く出題されます。
特に以下の機器についての理解が必須です。
- 高圧交流負荷開閉器(LBS) の役割
- 真空遮断器(VCB) の特徴
- 過電流継電器(OCR) の整定方法
【2026年の試験対策ポイント】
2026年度(令和8年度)の上期学科試験は、従来のマークシート方式(筆記方式)がなくなり、パソコンを使って解答する「CBT方式」のみで実施される予定です。画面上での図面読み取りなどに慣れておく必要があります。
技能試験の難易度と複線図の対策
技能試験では、高圧受電設備の低圧側回路や、変圧器の代用端子台を用いた結線作業が出題されます。
使用するケーブルも太くて硬い KIP電線(高圧絶縁電線) や、CVVケーブルなどが登場するため、第二種よりも握力や手際の良さが必要です。
また、施工条件が複雑になるため、複線図 を素早く正確に描く能力が合否を分けます。回路の仕組みを完全に理解していないと、重大な欠陥(誤配線)につながりやすいため、十分な練習が必要です。
第一種の合格を目指す方へ。詳しい過去問解説や対策情報をまとめています。
現場で役立つ専門知識の補強
第一種電気工事士として現場に出ると、聞き慣れない専門用語や特殊な工具に頻繁に遭遇します。
「この部材は何のためにあるのか?」「この工具はどう使うのか?」という疑問を持ったまま作業をするのは危険です。
例えば、ケーブル接続に使う リングスリーブ のサイズ選定ミスや、VVFケーブル の被覆剥ぎ取りの長さ間違いは、発熱や火災の原因になります。
現場で分からない用語が出てきた際は、以下の「電気工事用語図鑑」を活用して、正しい知識を確認することをおすすめします。写真付きで解説されているため、現場でのイメージ・トレーニングに最適です。
👉 電気工事の用語図鑑:テニショク図鑑(https://faq.tenisyoku.com)
第一種電気工事士の将来性とキャリアパス

2026年現在、生成AIがあらゆるデスクワークを効率化していますが、電気工事の現場においては「人の手」の価値 が相対的に上がっています。
AIは最適な配線ルートを設計(CAD作成)することはできますが、実際に狭い天井裏に入り、ケーブルラック を取り付け、硬い電線を曲げて接続するという物理的な作業を行うことはできません。
特に第一種電気工事士が扱う高圧設備は、インフラの根幹です。再生可能エネルギー設備の増加や、データセンターの建設ラッシュに伴い、高圧電気工事の需要は今後も右肩上がりと予測されています。
- 第二種で基礎を固める
- 第一種を取得し、高圧工事のスキルを磨く
- さらに電気工事施工管理技士(1級・2級)を目指して現場監督になる
このようにステップアップすることで、AI時代でも決して食いっぱぐれることのない、強固なキャリアを築くことができるでしょう。
まとめ
- 第一種電気工事士は、工場やビルなど大規模施設の電気工事が可能になる資格。
- 実務経験の要件は3年に短縮されており、早期の免状取得が可能になっている。
- 2026年度の上期試験からは学科がCBT方式のみになるなど、変化する試験情報に注意が必要。
- AI時代でも代替されない「現場力」を証明する資格であり、年収アップやキャリア安定に直結する。
第二種を取得済みの方は、ぜひ次のステップとして第一種電気工事士に挑戦し、電気技術者としての市場価値をさらに高めていきましょう。

