記事を読む前に 実践 過去問チャレンジ
電気工事士の試験において、施工方法のルールは単なる暗記ではなく、その背後にある「安全上の理由」を理解することが合格への近道です。
特に、日本の住宅事情で多い「木造建物」に関する工事ルールは、火災事故を防ぐための最重要項目として頻繁に出題されます。
今回は、リフォーム現場などでよく遭遇する「金属板張り(金属系サイディング)」や、モルタル壁の下地である「メタルラス」の壁を電線が貫通する際の工事方法についての問題です。
一見すると金属管工事のように見えますが、建物の材質によって「できる工事」と「できない工事」が明確に分かれます。
まずは、実際に出題される形式で問題を解いてみましょう。
【問題】
木造住宅の金属板張りの外壁(金属系サイディング)を貫通する部分の低圧屋内配線工事として、適切なものは次のうちどれか。
ただし、金属管工事、金属製可とう電線管工事に使用する電線は、600Vビニル絶縁電線とする。
- 金属管工事とし、金属板張りの外壁と電気的に完全に接続された金属管にD種接地工事を施し貫通施工した
- 金属管工事とし、壁に小径の穴を開け、金属板張りの外壁と金属管とを接触させ金属管を貫通施工した
- ケーブル工事とし、貫通部分の金属板張りの外壁を十分に切り開き、600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルを合成樹脂管に収めて電気的に絶縁し貫通施工した
- 金属製可とう電線管工事とし、貫通部分の金属板張りの外壁を十分に切り開き、金属製可とう電線管を壁と電気的に接続し貫通施工した
答えは決まりましたか?
選択肢の中には、「接地工事(アース)」を行っているものもあり、一見安全そうに見えるかもしれません。
しかし、この問題の建物は「木造」です。
木造住宅で金属製の壁を扱う際、絶対に守らなければならない鉄則があります。
次で正解と、なぜその工事以外は危険なのかを解説します。
1. 正解(適切な工事方法)は?
正解は、選択肢の 3 です。
【3. ケーブル工事とし、貫通部分の金属板張りの外壁を十分に切り開き、600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルを合成樹脂管に収めて電気的に絶縁し貫通施工した】
この選択肢だけが、電気設備の技術基準に適合した安全な施工方法です。

重要なポイントは「絶縁」
電気設備の技術基準の解釈(第145条)では、木造建物の「メタルラス張り」「ワイヤラス張り」「金属板張り」の壁を貫通する場合、以下の2点を行うことが義務付けられています。
- 【十分に切り開く】壁の金属部分(メタルラスや金属板)が電線や管に触れないよう、貫通穴を大きく開けて物理的な距離を確保すること。
- 【絶縁管に収める】貫通部分には、耐久性のある「絶縁管(合成樹脂管など)」を使用し、電気的に絶縁すること。

選択肢3は、この2つの条件をどちらも満たしているため「適切」となります。
2. なぜ「金属管と壁の接触」は危険なのか?
間違った選択肢(1、2、4)は、いずれも「金属管(または可とう電線管)と壁を接触・接続させている」点が共通しています。なぜこれが禁止されているのでしょうか。
木造住宅特有の「漏電火災」リスク
金属板やメタルラスは電気をよく通します。もし、金属管の中で電線がショートしたり漏電が発生した場合、接触している壁の金属部分全体に電気が流れてしまいます。
建物が「木造」であるため、漏電電流によって金属部分が発熱したり火花(スパーク)が散ったりすると、壁の内側にある木材や防水紙に引火し、火災(ラスモルタル火災)を引き起こす危険性が非常に高いのです。
そのため、たとえ接地工事(アース)をしていたとしても、木造の金属壁においては「接触させること自体」が禁止されています。
3. 各選択肢の「ダメな理由」をチェック
試験で間違えないように、不正解の理由もしっかり押さえておきましょう。
【1. 金属管を外壁と電気的に完全に接続した(不適切)】
金属管と外壁をつないでしまうと、漏電時に電気が壁へ流れるルートを自ら作ることになります。D種接地工事をしていても、木造貫通部での接続は認められません。
【2. 小径の穴を開け、接触させた(不適切)】
「小径の穴」では絶縁距離が取れず、「接触させ」ているため論外です。絶縁措置が全くされていません。
【4. 可とう電線管を壁と電気的に接続した(不適切)】
プリカチューブなどの「金属製可とう電線管」も金属製です。「十分に切り開き」までは良いのですが、その後に接続してしまっては意味がありません。
まとめ:この問題の攻略ポイント
木造住宅の「金属板張り」や「メタルラス壁」を貫通する工事の問題が出たら、以下のキーワードを探してください。
- 【十分に切り開く】(接触しないように距離をとる)
- 【合成樹脂管に収める】(電気を通さない管でガードする)
- 【絶縁する】
逆に、「接続する」「接触させる」という言葉があったら、それは火災の原因になる危険な施工(不正解)です。
現場での安全を守るため、この「絶縁の鉄則」をしっかりと覚えておきましょう。

