記事を読む前に 実践 過去問チャレンジ
電気工事士の試験において、感電事故や火災を防ぐための「接地工事(アース)」は非常に重要なテーマです。
原則として、300V以下の機械器具の金属製外箱や金属管には「D種接地工事」が必要ですが、特定の条件を満たせば「省略してもよい」という特例があります。
この「省略できる条件」は、試験で頻繁に出題されます。
特に「床の材質」や「電圧」、「管の長さ」が複雑に絡み合うため、正確に覚えていないと失点しやすい分野です。
まずは、実際によくある出題パターンで、今の実力をチェックしてみましょう。
問題
D種接地工事を「省略できないもの」は次のうちどれか。
ただし、電路には定格感度電流30mA、動作時間0.1秒の電流動作型の漏電遮断器が取り付けられているものとする。
- 乾燥した場所に施設する三相200V動力配線の電線を収めた長さ4mの金属管
- 乾燥したコンクリートの床に施設する三相200Vルームエアコンの金属製外箱部分
- 乾燥した木製の床の上で取り扱うように施設する三相200V誘導電動機の鉄台
- 乾燥した場所に施設する単相3線式100/200V配線の電線を収めた長さ8mの金属管
答えは決まりましたか?
「全部乾燥している場所だから、全部省略できるのでは?」
「漏電遮断器がついているから、安全なのでは?」
もしそう思ったなら、この後の解説を必ず読んでください。
この問題には、多くの受験生が誤解している「コンクリートの罠」と「漏電遮断器の性能条件」が隠されています。
1. ズバリ、正解(省略できないもの)は?
正解は、選択肢の 2 です。
「乾燥したコンクリートの床に施設する三相200Vルームエアコンの金属製外箱部分」
これだけが、D種接地工事を省略できず、施工しなければならないケースです。

なぜ「コンクリートの床」だと省略できないのか?
この問題の最大のポイントは、「コンクリート」の性質です。
電気設備の技術基準(解釈)では、接地工事を省略できる条件の一つに「乾燥した木製の床その他これに類する絶縁性のあるものの上で取り扱う場合」というルールがあります。
乾燥した木材は電気を通しにくいため、万が一機器が漏電しても、人体を通って地面へ電気が流れにくく、感電事故になりにくいからです。
しかし、コンクリートは電気を通します(導電性があります)。
コンクリートは地面と電気的に繋がっているとみなされるため、いくら乾燥していても「絶縁性のもの」とは認められません。
そのため、コンクリートの床の上に機器を置く場合は、原則通り接地工事が必要です。
なぜ「漏電遮断器」があるのに省略できないのか?
ここも重要なひっかけポイントです。
確かに「水気のある場所以外で、漏電遮断器を設置すれば省略できる」という特例は存在します。
しかし、その場合に使える漏電遮断器には、以下の厳しい条件があります。
【省略に使える漏電遮断器の条件】
・定格感度電流:15mA以下
・動作時間:0.1秒以下
今回の問題文には「定格感度電流30mA」と書かれています。
30mAの漏電遮断器では、接地工事を省略するための感度としては不十分なのです。
したがって、この漏電遮断器がついていることを理由に接地を省略することはできません。
2. 他の選択肢はなぜ省略できる?
では、なぜ他の選択肢は省略できるのか、理由を整理しましょう。
1. 長さ4mの金属管(OK)
金属管工事における特例です。
「乾燥した場所」であれば、管の長さが「4m以下」の場合、電圧に関わらず接地工事を省略できます。
3. 木製の床の上の電動機(OK)
先ほど解説した通り、「乾燥した木製の床」は絶縁性が高いため、その上で取り扱う機器は感電のリスクが低いとみなされ、接地を省略できます。
これは漏電遮断器の有無に関係なく適用されるルールです。
4. 単相3線式の長さ8mの金属管(OK)
こちらも金属管の特例です。
「対地電圧が150V以下」で、かつ「乾燥した場所」であれば、管の長さが「8m以下」まで省略可能です。
ここで「単相3線式100/200V」という電圧に注目してください。
この配線方式の「対地電圧」は100Vです。
150V以下の条件を満たしているため、8mの金属管でも接地工事を省略できます。
(もしこれが三相200Vだった場合は、対地電圧が200Vになるため、8mでは省略できません。)
3. これで完璧!接地工事「省略条件」の覚え方
試験会場で迷わないよう、D種接地工事を省略できる条件を整理して覚えましょう。
以下のどれか一つに当てはまれば省略可能です。

【条件1】電圧と場所で判断(家電製品など)
・対地電圧150V以下の機器を、乾燥した場所に置く場合
(例:リビングの冷蔵庫やテレビなど)
【条件2】絶縁性の場所で判断
・乾燥した「木製の床」の上で扱う場合
(注意:コンクリート、土間、モルタルはNG!)
【条件3】金属管の長さで判断
・4m以下:乾燥していれば電圧問わずOK
・8m以下:乾燥しており、かつ対地電圧150V以下ならOK
【条件4】安全装置で判断(難所!)
・水気のある場所以外
・高感度漏電遮断器を設置(定格感度電流15mA以下、0.1秒以下)
【条件5】構造で判断
・二重絶縁構造の機器(「回」のマークがついているもの)
4. 試験対策のコツ
試験でこの種の問題が出たら、以下の手順でチェックしてください。
- 「水気のある場所」か?→ 水気があるなら絶対に省略不可です。(漏電遮断器があってもダメ!)
- 「コンクリートの床」か?→ コンクリートなら「木製の床」の条件は使えません。
- 「漏電遮断器」の感度は?→ 30mAなら省略理由になりません。15mA以下か確認しましょう。
- 「金属管」の長さと電圧は?→ 4m(全電圧OK)か、8m(150V以下ならOK)の数字を思い出しましょう。
まとめ
接地工事の省略問題は、「危険性が低いから省略できる」という安全の理屈を理解しているかが問われています。
・コンクリートは電気を通すから危険。
・30mAの漏電遮断器では、接地なしで使うには感度が足りない。
この2点を押さえておけば、自信を持って正解を選べるはずです。現場でも「ここはコンクリだからアースが必要だな」と判断できる、確かな知識を身につけましょう。

